2000年作品。山あいの湖を舞台に、そこに暮らす女と殺人を犯し、死に場所を求める男との痛々しいつながりを描く。
監督は韓国の鬼才キム・ギドク。
キム・ギドクの作品は厄介だ。
はっきり言って、わかったようなわからないような、極めて難解な映画であるにも関わらず、観終わった後には何かしらの強いインパクトを残すからだ。正直、どう捉えていいのか毎回悩んでしまう。
本作もそんなギドク作品に抱いていた印象を補強するような仕上がりになっている。
主人公の女は極めて怖い。男が他の女と寝ているときに、トイレから顔を出してその様子を覗き見るシーンがあるが、それを観たときには言いようのない寒気を覚えた。
とにかくその愛し方は粘着質だ。特に言葉を発しない分、女の異質さは際立ったものなっている。
しかしその行動はどこか献身的なものがあるのもまた事実だ。一途に愛するがゆえに、女の行動が異質なものになっていく様は怖さと同時に悲哀も生み出している。
最後の方で、女は男を引き止めるために極めて痛々しい行動をとる。そこには一途であると同時に、張り詰めた思いを感じる。
女はそういう行動をとる以外に男の心を自分の方に引き寄せられないのだ。痛いけれど、その姿は充分過ぎるほどに切ない。
映画全編に漂う詩情、そして痛さの奥に厳然と備わる切なさが観終わった後にも余韻を残す。佳作である。
評価:★★★★(満点は★★★★★)
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